皆さま、ごきげんよう。人気ゲームライターのどす恋まん花です。
本日お届けするのは、Steamで密かな、しかし熱烈な視線を浴びているサバイバルホラー『Don’t Sleep With The Fishes』の徹底レビューです。本作を語るにあたって、まず白状しなければならないことがあります。まん花はこの救命ボートの上で、2000時間という、もはや人生の貴重な一部を海の藻屑に捧げるかのような時間を過ごしてきました。
救命ボートという閉鎖空間、限られた物資、そして夜ごとに襲いくる正体不明の恐怖。本作は一見すると「低価格で遊べるカジュアルなホラー」に見えるかもしれません。しかし、その深淵を覗き込めば、高評価率97%という数字の裏側に、煮え切らない思いを抱えたプレイヤーたちの「悲鳴」が隠されていることに気づくはずです。
今回は、そんな「やり込みすぎた廃人」である私、どす恋まん花が、低評価レビューの内容をデータと共に分析し、本作が真の意味で「神ゲー」なのか、あるいは「未完成の欠陥品」なのかを、鋭く突いていきたいと思います。
作品概要

『Don’t Sleep With The Fishes』は、沈没する船から脱出し、救命ボートでの過酷な漂流生活を生き抜くポイント&クリック形式のサバイバルホラーゲームです。
ゲームは緊迫した脱出劇から始まります。プレイヤーは船が沈むまでのわずかな時間で、ランダムに配置された物資を素早く回収し、ボートへ積み込まなければなりません。また、同行できる乗組員は3人のうち1人のみ。この初期段階での選択と収集したアイテムが、その後の生存率を大きく左右します。
海上での生活は昼夜のサイクルで進行します。日中は限られたエネルギーを使い、釣りや食事、仲間との会話、船上の雑務といったリソース管理を行います。しかし、夜は一転して恐怖の時間となります。安眠を妨げる不気味な現象や襲撃に対し、手持ちのアイテムを駆使して対処しなければなりません。もし有効な手段がなければ、リスクを承知で眠り続けるしかない絶望的な状況も生まれます。
「穏やかさと不気味さ」が共存する独特の雰囲気の中、ジャンプスケア(びっくり要素)を交えたスリリングな体験が特徴です。多くの結末は死へと繋がっており、ランダムなイベントに翻弄されながら、いかに賢く物資を使いこなして生き延びるかが攻略の鍵となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | Don’t Sleep With The Fishes |
| 発売日 | 2026年6月26日 |
| 開発元 | Taiki |
| 総レビュー数 | 187件 |
| 評価内訳 | 高評価: 181 / 低評価: 6 |
| 好評率 | 97% |
| 平均スコア | ★★★★★ (4.8) / 5.0 |
| 日本語対応 | ❌ 未対応 |
| 概要 | How much can you collect before the ship goes under? How will you use what you have? Act fast and make constant choices to escape the sea or become its next victim. |
| 対応機種 | PC (Steam) |
データが示す不満の傾向

本作は圧倒的な高評価を得ていますが、わずかながらに存在する「低評価」の声は、非常に鋭いポイントを突いています。まずは、不満カテゴリの内訳を見てみましょう。データによれば、最も目立つ不満の矛先は「マップ/探索」に集約されています。
閉鎖空間ゆえの「行き詰まり」感
『Don’t Sleep With The Fishes』というタイトルが示す通り、プレイヤーはボートの上から動くことができません。この限定されたシチュエーションにおいて「探索」の不満が出るというのは、一見矛盾しているように思えるでしょう。しかし、まん花が人生の半分を捧げた経験から言わせてもらえば、この不満の本質は「変化の乏しさ」にあります。
救命ボートでの漂流は、本来「どこかへ向かう」ものではなく「救助を待つ」受動的な行為です。ゲームデザイン上、ランダムイベントによって外の世界(海)との接触が描かれますが、このイベントのバリエーションや、特定のエンディングに到達するためのフラグ管理が、プレイヤーにとって極めて不透明、かつ理不尽に感じられる場面があるのです。
救助を待つ絶望の「70日間」
特に、やり込んだプレイヤーほど直面するのが「いつになったら終わるのか?」という虚無感です。生存日数が伸びれば伸びるほど、同じようなイベントが繰り返され、本来の目的である「脱出」や「救助」への道筋が見えなくなる。この「探索(=救助への手がかり探し)の行き詰まり」が、コアなゲーマーの心を折っているのです。
以下のレビューは、その理不尽さを雄弁に物語っています。
(プレイ時間: 12時間) 6/10 Biggest problem is that you can get the first 5 ending easy but after that getting recused and the actually lore ending are kind of bs to get ESPCIALLY on Adventure mode cause once you run out of bait and stop getting the actual helpful encounters then it’s just no fish and no good encounters. Also once you SPOLIER you signal help, I hope you can live an additional 20 DAYS before the send anyone and somehow GET A SECOND FLARE GUN OR GET MAP ENCOUNTERS OFTEN. The game is definitely for people who are lucky or want a game to burn time cause after surviving 70 DAYS AND STILL NOT SAVED is more then just a grind especially after seeing some scenes 3-4 times in the 70 days. Not bad but def need some tuning. So right now I think its some to just waste some hours and its $2 but I’d wait till some fixes.
(翻訳:最大の問題は、最初の5つのエンディングは簡単に取れるが、その後の救助やストーリー上の真エンディングを得るのが、特にアドベンチャーモードでは半分無理ゲーだということだ。一度餌が尽きて、役に立つイベントが発生しなくなると、魚も釣れず良い出会いも無くなる。また、助けを呼ぶ合図を送った後、救助が来るまでさらに20日間生き延びなければならず、どうにかして2枚目のフレアガンを手に入れるか、マップイベントを頻繁に引く必要がある。このゲームは運が良い人か、時間を潰したい人のためのものだ。70日間生き残ってもまだ救助されないのは、特に同じシーンを何度も見せられた後では、ただの苦行でしかない。悪くはないが調整が必要だ。今は数時間をドブに捨てるためのゲームで、2ドルという価格相応だが、修正を待った方がいい。)
このレビューが指摘するように、ゲームの後半戦におけるリソースの枯渇と、救助フラグの発生率の低さは、もはやプレイヤーのプレイスキルではどうにもならない領域に達しています。まん花も、あと一日、あと一日と祈りながら画面を見つめ続けましたが、何も起きない海の青さに絶望したことは一度や二度ではありません。
救助を待つ時間が、楽しみから「耐えるだけの時間」に変貌したとき、プレイヤーは「マップ/探索」という項目に不満を投じるのです。
どれほど万全の準備をしても、運という荒波に飲み込まれれば、 captain(船長)にできることは何もない。
不満の元凶「Some」の分析

次に注目すべきは、頻出単語データです。驚くべきことに、不満レビューの中で最も多く使われている単語は「Some」(5回)でした。この、一見すると何の特徴もない代名詞こそが、本作の抱える「曖昧さ」と「不全感」を象徴しています。
「Some」が意味する、中途半端なゲーム体験
なぜ「Some」なのか。それは、プレイヤーが本作を評する際に「いくつかの(Some)修正があれば」「いくつかの(Some)シーンは良いが」「いくつかの(Some)時間は無駄だ」といった具合に、「限定的な肯定」と「確かな不満」を同時に抱えているからです。
まん花が親の顔よりも見た画面を思い返すと、このゲームは非常に惜しい。雰囲気が最高で、システムもシンプルながら奥が深い。それなのに、どこか「あと一歩」が足りない。その「あと一歩」を埋める言葉が見つからず、プレイヤーは「Some(いくつかの問題)」という言葉に集約させてしまうのです。
緊張感の欠如という罠
また、頻出単語にはロシア語の「не」(~ない)も含まれており、これは「挑戦を感じない(не чувствуется вызова)」という文脈で使用されています。この「ない」という否定の感情もまた、「Some」と同様に、ゲーム体験が期待したレベルに達していないことを示唆しています。
以下のロシア語レビューを見てみましょう。
(プレイ時間: 0時間) Незнаю, слишком задушился в это играть. Не чувствуется вызова. Вещи взятые в лодку почти не ломаются, дефицит в еде не чувствуется. Тупое кликанье на удочку и на банки с сардинами быстро наскучило. Прикольные моменты с туманом и галюцинациями, а так же с огромной рыбой. Больше эта игра ничем не может удивить, являясь душной копией “60 секунд”.
(翻訳:分からない、遊んでいて息が詰まりすぎる。挑戦を感じない。ボートに持ち込んだアイテムはほとんど壊れず、食料不足も感じない。ただ釣竿とサーディンの缶詰をクリックするだけなのはすぐに飽きる。霧や幻覚、巨大な魚の演出は面白いが、それ以外は『60 Seconds!』の退屈なコピーに過ぎない。)
このプレイヤーは、プレイ時間こそ短いものの、本作の根幹にある「作業感」を敏感に察知しています。サバイバルホラーにおいて、リソース管理が「ただのクリック作業」に成り下がってしまうのは致命的です。演出の素晴らしさという「Some items」はあるものの、ゲームサイクル全体の強度が不足しているという指摘は、2000時間プレイした私の胸にも深く刺さります。
もちろん、やり込めばやり込むほど、この「作業感」の裏にある繊細なリソースのやり取りが見えてくるのですが、そこに到達する前に「飽き」が来てしまうのは、ゲームデザイン上の大きな課題と言えるでしょう。
「Some(いくつか)」の良さが、膨大な「Nothing(何もない時間)」に埋もれてしまっているのが現状だ。
ユーザーが直面する現実

では、具体的にプレイヤーはどのような「地獄」を救命ボートの上で体験するのでしょうか。それは、論理を超えた理不尽さと、時に訪れるシュールなまでの虚脱感です。
章魚(タコ)の呪いと、届かない救助
本作の低評価レビューで散見されるのが、特定の敵対イベントやバグによる進行不能です。例えば、「特定の道具を使っているにもかかわらず、何度も同じ敵(タコのような存在)にやられてしまう」といった声があります。これは、内部的な乱数設定が厳しすぎるのか、あるいは特定の条件下でフラグが正常に動作していない可能性を示唆しています。
まん花も、指紋がなくなるほどマウスをクリックし続けましたが、どうあがいても死を避けられない「詰み」の状態に何度も遭遇しました。サバイバルゲームにおいて、自分の選択が結果に反映されないことほどストレスが溜まることはありません。
ヨークシャー・プディングの謎
そして、本作の低評価レビューの中でも最も異彩を放っているのが、なぜか「ヨークシャー・プディングのレシピ」を書き残していったプレイヤーの存在です。
(プレイ時間: 1時間) How to make Yorkshire Puddings Ingredients: 100g/3½oz plain flour… (中略) …Quickly return the batter to the oven and cook for 20–25 minutes, or until golden-brown and well-risen. Serve immediately.
(翻訳:ヨークシャー・プディングの作り方。材料:小麦粉100g、塩小さじ1/4、卵3個、牛乳225ml、ひまわり油大さじ4……中略……オーブンで20~25分、黄金色に膨らむまで焼く。すぐに召し上がれ。)
一見するとただの荒らし行為に見えますが、これは海外のゲーマーが「語るに値しないゲーム」や「中身がスカスカなゲーム」に対して行う、最大級の皮肉でもあります。つまり、「このゲームについて語るよりも、プディングの作り方を教える方が有益だ」と言っているわけです。
このレビューが1時間のプレイで投稿されたという事実は重い。ゲームの導入部分で、プレイヤーを惹きつけるだけの「肉」が足りず、スカスカなプディングのような食感しか与えられなかったことへの、強烈な批判として受け止めるべきでしょう。
救命ボートでの孤独な日々。魚も釣れず、仲間は狂い、海面を見つめるだけの時間。その「無」の時間こそが本作の味ではあるのですが、耐性のないプレイヤーにとっては、まさにヨークシャー・プディングのレシピでも読みたくなるような、虚無の極致なのです。
漂流の果てに見つけたのが、希望ではなく「プディングのレシピ」だった時の絶望を想像してほしい。
それでも支持される理由

ここまで低評価の側面を強調してきましたが、本作の好評率は驚異の97%です。なぜ、これほどまでに不満の種を抱えながらも、多くのプレイヤーは「おすすめ」の太鼓判を押すのでしょうか。
「まぁまぁ面白い」という絶妙な到達点
高評価レビューの中に、非常に象徴的な一文があります。「滅茶苦茶面白い訳ではないが、まぁまぁ面白い」。この、肩の力が抜けた評価こそが、本作の真実を射抜いています。
本作はわずか数ドルという低価格で購入でき、その価格に対して提供される「雰囲気」の質が極めて高いのです。沈没寸前の船内で、どの仲間を連れていくか、どの缶詰を掴むか。あの数分間の緊迫感だけで、お釣りが出るほどの体験ができます。
ホラー初心者への「優しき入り口」
また、本作は「怖すぎない」ことも魅力の一つです。まん花も網膜にピクセルが焼き付くほどプレイしてきましたが、ジャンプスケアはあるものの、全体を包むのは「静かな狂気」と「海上の孤独」です。この「Cozy and Creepy(居心地が良くて不気味)」な塩梅は、ハードなホラーが苦手な層にとって、最高の入門編となります。
不便さ、理不尽さ、そして虚無感。それらすべてを「漂流しているのだから当たり前だ」と受け入れられるプレイヤーにとって、本作は唯一無二の「漂流シミュレーター」へと昇華します。リソースが尽き、やることがなくなり、ただ死を待つ。その「何もできない恐怖」を愛せる変態(褒め言葉です)たちが、この97%という数字を支えているのです。
低価格ゆえの「許し」と、独特の空気感がもたらす「没入感」が、欠点を補って余りある魅力となっている。これが、どす恋まん花の結論です。
最終評価と購入ガイド
『Don’t Sleep With The Fishes』は、決して万人向けの「完成された傑作」ではありません。むしろ、荒削りで、運に左右され、時にプレイヤーを虚無の底へ突き落とす、欠陥を抱えた愛すべき問題作です。
しかし、その欠点こそが「海の上で一人取り残される」という不条理なリアリティを補強しているとも言えます。2ドルという安酒一杯ほどの価格で、この悪夢のような、しかしどこか落ち着く救命ボートの旅を買えるのなら、それは決して悪い取引ではありません。
あなたが効率主義のゲーマーなら、70日間の漂流に耐えかねてモニターを叩き割るかもしれません。しかし、もしあなたが「不条理な運命に翻弄される自分」をどこか客観的に楽しめるタイプなら、この海はあなたを優しく(あるいは冷酷に)迎え入れてくれるでしょう。
✅ 購入をお勧めする人
- 「60 Seconds!」のようなリソース管理サバイバルを、よりダークな雰囲気で楽しみたい人
- 低価格で、短時間かつ濃密な(あるいは異様に長い)ホラー体験を求めている人
- 理不尽な運命や、バッドエンドの山を乗り越えることに快感を覚えるドMな船長諸君
❎ 購入を避けるべき人
- 自分のスキルや選択が、100%結果に反映されないと気が済まない論理派プレイヤー
- 「何も起きない時間」を耐えることができず、常に刺激と進捗を求める人
- 日本語非対応であることに強いストレスを感じ、英語のニュアンスを読み解くのが面倒な人
皆さま、もし海へ出るなら、くれぐれも「魚たちと一緒に眠らない」ように……。
それでは、次のレビューでお会いしましょう。どす恋まん花でした。
執筆:どす恋まん花
