皆様、ごきげんよう。人気ゲームライターのどす恋まん花です。
本日は、一部の熱狂的なゲーマーの間で「現代の奇書」とも「RPGの革命児」とも囁かれている話題作、『Esoteric Ebb』を徹底解剖いたします。本作は、あの伝説的な傑作『Disco Elysium』の正当な後継者を自負するかのような強烈な個性を放っており、Steamでも非常に高い評価を得ています。しかし、光が強ければ影もまた深いもの。高評価の濁流に埋もれがちな「低評価」の声にこそ、このゲームの真の姿が隠されているのではないか――。
そう考えたまん花は、このタイトルを2000時間やり込んでいるという、もはや私生活に支障をきたしかねないレベルの没入を経て、この記事を執筆するに至りました。データと情熱、そして一滴の毒を交えて、ノルヴィクの街の深淵を覗いてみましょう。
作品概要

「Esoteric Ebb」は、独特のファンタジー世界を舞台にした等角視点(アイソメトリック)のCRPGです。Dungeons & Dragons第5版(5e)ルールセットに深く触発されており、テーブルトークRPGのような高い自由度と選択の重みが特徴です。
プレイヤーは、失敗した宮殿の役人であり「エソテリックな事件」の専門家である「クレリック」となり、相棒のゴブリン「スネル」と共に、初めての選挙開催中に発生した茶屋爆破事件の謎を追います。舞台は広大なファンタジー都市「ノルヴィク」で、街路、塔、暗いトンネルを探索しながら、酔っぱらったスフィンクスや角売りなどの「幻想的な愚か者」と交流します。
ゲームシステムは、深く分岐する対話を通じて物語が展開され、プレイヤーの選択が後の展開に影響を及ぼします。政治的陰謀が渦巻く中、派閥や政党の利害を考慮しながら、クエストを自由に解決していくことが求められます。暴力は最終手段とされつつも、必要であればターン制エンカウンターでサイコロの出目が生死を決めます。クレリックとしての「ワイルド・スペルキャスティング」能力で、精神支配、癒し、秘密の発見、生者や死者との会話など、多様な方法で状況を打開できます。
また、道徳にとらわれない「ローグ」のようなプレイスタイルも許容されます。賄賂、脅迫、忍び込み、盗み、建物への侵入など、自由な手段で目標達成を目指せます。キャラクターはレベル1から6まで成長し、5eベースの能力値配分や装備カスタマイズを通じて、プレイスタイルに合わせたクレリックを育成できます。政府職員としての義務、個人的な神聖な旅、あるいは政治的支配への野望、プレイヤー自身の選択が、この奇妙な政治ミステリーの結末を決定づけることになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | Esoteric Ebb |
| 発売日 | 2026年3月3日 |
| 開発元 | Christoffer Bodegård |
| 総レビュー数 | 417件 |
| 評価内訳 | 高評価: 402 / 低評価: 15 |
| 好評率 | 96% |
| 平均スコア | ★★★★★ (4.8) / 5.0 |
| 日本語対応 | ❌ 未対応 |
| 概要 | 『ESOTERIC EBB』は、イソメトリック視点のシングルプレイヤーRPGです。ゴブリンの相棒と共に、政治的陰謀を解き明かしましょう。サイコロを振り、緊張感あふれる選択をし、初めての選挙を目前に控えた街を探索します。 |
| 対応機種 | PC (Steam) PlayStation 5 Nintendo Switch Xbox Series X|S |
データが示す不満の傾向

本作に対する不満の声を分析すると、興味深い事実が浮かび上がります。不満カテゴリの内訳では「ストーリー/テンポ」が圧倒的多数を占めており、これはこのゲームが「読むこと」を主体としたナラティブRPGである以上、避けては通れない宿命と言えるでしょう。キーボードの印字が消え失せるほど本作をプレイし続けたまん花も、確かにこの「テンポの壁」には何度も阻まれそうになりました。
テキストの海に溺れるプレイヤーたち
本作は、とにかく「読ませる」ゲームです。しかし、そのテキストがプレイヤーにとって「心地よい波」となるか、「不快な濁流」となるかで評価は二分されます。低評価を投じたプレイヤーの多くは、このテキストの質と量に圧倒され、かつ失望しています。特に「テンポ」の問題は深刻です。物語の核心に触れるまでにかかる時間が長く、その間、プレイヤーは興味の持てないキャラクターとの不毛な対話や、設定の羅列を読まされることになります。
期待と現実のミスマッチ
開発側は「Disco Elysium」や「Planescape: Torment」といった巨人の名前を挙げて期待を煽りましたが、これが裏目に出た側面も否定できません。これらの作品は、テキストの背後に深淵な哲学や、プレイヤーの感情を揺さぶる独自のシステムが隠されていました。しかし、『Esoteric Ebb』におけるテキストは、時に「中身のない言葉遊び」や「過剰な説明」に終始していると批判されています。
(プレイ時間: 0時間) Wanna know why there were so little games like Disco Elysium? Cause for the game to focus its whole gameplay loop on writing and dialogue, they have to be of superb quality, and its not easy to achieve. Disco Elysium won with the quality of the dialogue and design of your inner emotions, which were unique and fascinating. Sadly this game takes practically all of its core gameplay loop, without the level of writing needed to back it up.
(日本語訳:なぜDisco Elysiumのようなゲームが少ないか知りたい?ゲームプレイのループ全体をライティングと対話に焦点を当てるなら、それらが最高の品質でなければならず、それを達成するのは容易ではないからだ。Disco Elysiumは対話の質と、ユニークで魅力的な内面的感情のデザインで勝利した。悲しいことに、このゲームは中核となるゲームプレイ・ループをほぼすべて取り入れながら、それを支えるのに必要なライティングのレベルに達していない。)
このように、目の肥えたCRPGファンからは、表面的な模倣に留まっているという手厳しい指摘が飛んでいます。テキスト主体という博打において、筆力の不足は致命傷になりかねません。まん花としても、確かに序盤の数時間は「いつ面白くなるのかしら?」と自問自答しながら、ノルヴィクの石畳を見つめる時間が長かったことは否定できません。
しかし、この「テンポの悪さ」は、実は開発者が意図した「官僚的なもどかしさ」の演出なのではないか、という見方もできます。選挙直前の混沌とした都市、やる気のない同僚、爆破された茶屋。すべてが停滞し、歪んでいる。その空気感を「読ませるストレス」として表現しているのだとしたら、あまりにも過激なデザインですが。
言葉の海に沈むことは、時に探索ではなく単なる「溺死」へとプレイヤーを導いてしまうのです。
不満の元凶「Disco」の分析

頻出単語TOP7を見ると、その異常なまでの傾向が一目瞭然です。「Disco」が28回、「Elysium」が15回。このゲームそのもののタイトルである「Esoteric」や「Ebb」よりも、他作品の名前が圧倒的に叫ばれているのです。これはもはや、本作が「Disco Elysiumの影」から逃れられていないことを証明しています。自分の実家よりもノルヴィクの街路に詳しいまん花から見ても、この現象は非常に残酷な現実を突きつけていると感じます。
偉大すぎる先行者との比較
多くのプレイヤーが『Esoteric Ebb』をプレイする際、無意識のうちに「Disco Elysium」のフィルターを通しています。それは、ダイスロールの結果が対話に劇的な変化をもたらすシステムや、キャラクターの内面が語りかけてくるスタイルが、あまりにもDEを彷彿とさせるからです。しかし、比較対象が「世紀の傑作」であれば、その基準は極めて高くなります。
「カーゴ・カルト」という痛烈な批判
特に辛辣なのが、ロシア語圏のユーザーからの「カーゴ・カルト(貨物崇拝)」という表現です。これは、形だけを真似て本質を見失っているという意味で使用されています。DEにおける「スキルが人格を持って話しかけてくる」というシステムは、主人公の崩壊した精神を表現するための必然的な装置でした。一方で本作のそれは、単なる「便利なナレーション」や「奇をてらった演出」に留まっている、という見方です。
(プレイ時間: 9時間) Знаете, на бумаге всё выглядело как влажная мечта любого уважающего себя ролевика. … Проблема Esoteric Ebb не в том, что она инди. Проблема в том, что это, ♥♥♥♥, карго-культ. Автор посмотрел на Disco Elysium, увидел, как там строятся диалоги, как работают внутренние голоса и абсурдные шутки, и решил: Ага, я могу так же! И начал копировать.
(日本語訳:机の上では、自尊心のあるロールプレイヤーにとっての夢のように見えた。……Esoteric Ebbの問題は、それがインディーであることではない。問題は、これがクソったれなカーゴ・カルトだということだ。作者はDisco Elysiumを見て、対話がどのように構築され、心の声や不条理なジョークがどう機能するかを確認し、「ああ、自分にもできる!」と決心した。そしてコピーを始めたんだ。)
このレビューが指摘するように、表面上の奇抜さを真似ることはできても、その裏にある「魂」までをコピーすることは不可能です。比較されることを前提としたマーケティングは、同時に比較による落胆という諸刃の剣をプレイヤーに突きつけます。DEの熱狂的なファンであればあるほど、本作の「DE風」の味付けが、安っぽい代用品のように感じられてしまうのでしょう。
まん花が思うに、本作はDEという「毒」を摂取しすぎたのかもしれません。独自の魅力を確立する前に、偉大な先人の声が大きすぎて、開発者の真の声がかき消されてしまった。そんな悲哀を、頻出単語のデータは如実に物語っているのです。
模倣から始まった旅が、オリジナリティの欠如という袋小路で立ち往生している様は、見ていて忍びないものがあります。
ユーザーが直面する現実

本作をプレイするということは、時に「理不尽」という名の壁に頭を打ち付けることに他なりません。瞬きをする時間すら惜しんで画面を凝視し続けたまん花でさえ、キーボードを叩き折りたくなるような瞬間に何度も遭遇しました。特に、低評価レビューで見られる「30分で死んだ」という報告は、本作の持つ残酷な一面を象徴しています。
ダイスの神の冷酷な微笑み
本作はD&D 5eのルールを採用していますが、その適用方法は時に非常に過酷です。ナラティブRPGにおいて、失敗が面白い物語を紡ぐことはDEが証明しましたが、『Esoteric Ebb』では、失敗が単なる「無意味な死」や「進展の停止」に繋がることがあります。高い成功率を誇るはずのダイスロールが、ここぞという場面で裏切り、そのままゲームオーバー画面へ。セーブを忘れていれば、それまでの長い対話がすべて泡と化すのです。
設定の暴力と政治的「押し付け」
また、世界観の導入部分での「情報の過負荷」もプレイヤーを疲弊させます。冒頭から、プレイヤーはまだ何も知らないはずの世界の、それも極めて複雑な政治的派閥(ナショナリスト、ソーシャリスト、アナーキスト等)への所属や見解を求められます。世界観を理解するための猶予もなく、いきなり「あなたの政治的立場は?」と問われる苦痛。これはDEでも見られた手法ですが、本作ではその文脈が希薄なため、多くのプレイヤーが「強制的な政治教育」を受けているような不快感を覚えています。
(プレイ時間: 0時間) 30minutes in and died in not funny not amusing way after being flooded with walls and walls of uninteresting unfunny texts and irritating dice rolls that failed despite having high % of success and killed me. … Additionally it forces politics down the throat since beginning far stronger than Disco Elysium in which politics actually makes sense.
(日本語訳:30分プレイして、面白くも何ともない方法で死んだ。興味をそそられないユーモアのないテキストの壁に埋もれ、高い成功率があったにもかかわらず失敗したイライラするダイスロールのせいで殺されたんだ。……さらに、Disco Elysiumよりもはるかに強く、最初から政治を押し付けてくる。DEでは政治に意味があったが、ここではそうではない。)
このレビュー主の憤りは、多くの未経験者が陥る罠を正確に描写しています。プレイヤーに自由を与えるはずのRPGが、その実、特定の見解やプレイスタイルを強要する構造になっている点は、自由度を謳う本作にとって最大の矛盾と言えるでしょう。
もちろん、こうした理不尽さを「TRPGの洗礼」として楽しめる層もいるでしょう。しかし、デジタルゲームとして提供される以上、リトライの快適さや、失敗が「納得感のある結果」に繋がるデザインは不可欠です。それがないままに「DE風」を気取っても、待っているのはプレイヤーの離脱だけなのです。
高確率のダイスが外れた瞬間の虚脱感は、もはやゲーム体験ではなく「精神修行」の域に達しています。
それでも支持される理由

ここまで手厳しい批判を重ねてきましたが、それでも本作の好評率が96%という驚異的な数字を維持している事実を無視してはいけません。血の代わりにポーションが流れていると錯覚するほど本作に浸かったまん花には、低評価を下した人々が見落としている、あるいは受け入れられなかった「歪な魅力」が見えています。
唯一無二の「不気味な愛らしさ」
本作のビジュアルと世界観設定は、一言で言えば「極上の狂気」です。爆発した茶屋、酔いどれのスフィンクス、そして何より、どこか憎めない相棒のゴブリン「スネル」。このスネルとのやり取りだけでも、本作をプレイする価値があると断言するプレイヤーは少なくありません。DEが「絶望と孤独」を描いたのに対し、本作は「滑稽さと混沌」を描いています。この方向性の違いに気づき、ノルヴィクという街の狂ったリズムに身を任せることができた時、本作は真の姿を見せ始めます。
5eルールの「ナラティブへの転用」という挑戦
D&D 5eという、本来は戦闘や厳密なデータ管理のためのルールを、ここまで大胆に「対話と選択」のために解釈し直した試みは称賛に値します。スペルキャスティングを戦闘の道具ではなく、相手の心を開いたり、過去を覗き見たりするための「鍵」として使う。この発想は、従来のRPGにはなかった新鮮な体験をもたらします。自由奔放な解決策、例えば「クエスト報酬を盗んでから報告する」といった悪童のようなプレイスタイルが許容されている点は、まさにテーブルトークの自由そのものです。
「読む」ことを愛する者への聖域
低評価レビューで「テキストの山」と揶揄された部分は、本物の読書家やCRPGジャンキーにとっては「ご馳走」でしかありません。密度が高く、一語一句に設定が詰め込まれたテキストは、ノルヴィクという異世界の空気を肌で感じるためのエッセンスです。ボイスがないことを「不誠実」と断じるのではなく、自分の脳内でキャラクターの声を再生する「想像力の余白」として楽しむ。そうした古き良きRPGの嗜みを知る人々にとって、本作は近年稀に見る純度の高いナラティブ体験を提供しているのです。
万人受けを切り捨て、特定の層にのみ深く刺さるように設計された尖り具合こそが、本作が「圧倒的好評」を獲得している真の理由でしょう。低評価をつけた人々は、単に「この狂った宴」の招待客ではなかっただけなのかもしれません。
まん花も、最初の20時間は苦行でしたが、それを過ぎたあたりでノルヴィクの風の匂いが分かるようになりました。一度その境地に達してしまえば、もはや現実世界に戻る方が困難に感じられるほどです。このゲームには、論理では説明できない、人を変質させるほどの強い「磁場」が存在しているのです。
欠点すらも「味」として飲み込める者だけが、ノルヴィクの真の支配者となれるのです。
最終評価と購入ガイド
さて、長々と語ってまいりましたが、どす恋まん花の結論をお伝えしましょう。
『Esoteric Ebb』は、決して「万人向けの神ゲー」ではありません。むしろ、その評価の高さに騙されて安易に手を出すと、重度の火傷を負う可能性が高い「劇薬」のような作品です。本作は『Disco Elysium』という巨大な山脈を登ろうとして、その峻厳さに跳ね返され、独自の奇妙な洞窟へと逃げ込んだ迷子のようです。しかし、その洞窟の中には、他では絶対に見ることのできない、美しくも奇怪な結晶が輝いています。
夢の中でもダイスを振り続けるレベルまでやり込めば、本作が単なる模倣ではなく、開発者の偏執的なこだわりが詰まった「怪物」であることが理解できるはずです。ただし、そのレベルに達するまでには、膨大なテキスト、不条理な死、そして日本語非対応という高い壁を乗り越えなければなりません。
このゲームは、あなたの「忍耐」と「想像力」、そして「政治的寛容さ」を試してきます。それを乗り越える覚悟があるのなら、ノルヴィクの門を叩く価値は十分にあります。
✅ 購入をお勧めする人
- 『Disco Elysium』の喪失感を、たとえ歪な形であっても埋めたいと切望する人
- D&D 5eのルールを、戦闘ではなく「物語を壊すため」に使ってみたい自由人
- 辞書を片手に、膨大な英文の裏に隠された設定の断片を拾い集めることに喜びを感じる変態的読書家
❎ 購入を避けるべき人
- テンポの良いストーリー展開と、フルボイスによる映画的な演出を求める人
- ダイスロールの結果に一喜一憂し、理不尽な失敗に対してコントローラーを投げたくなる人
- ゲームに明確な「正解」や「道徳的な正しさ」を求め、政治的・思想的な議論に疲れている人
執筆:どす恋まん花
