皆さま、ごきげんよう。人気ゲームライターのどす恋まん花です。
本日取り上げるのは、Steamで密かな注目を集め、そして多くの熱心なファンを絶望の淵に突き落としている問題作……いえ、話題作の『Mall Simulator』です。
シミュレーションゲームというジャンルは、一度ハマると時間が溶ける魔法のような魅力がありますが、本作はその「溶け方」が少々特殊です。かくいう、まん花も、このデジタルな巨大建造物に2000時間という、客観的に見れば正気を疑われるほどの時間を注ぎ込んできました。それだけの時間を捧げたからこそ見える景色、そして感じる「痛み」があります。
「非常に好評」という数字の裏側に潜む、低評価レビューの叫び。それらは単なるクレーマーの戯言なのか、それとも愛ゆえの断末魔なのか。今回は一人の廃人ゲーマーとして、その核心に鋭く切り込んでいきたいと思います。
作品概要

『Mall Simulator』は、巨大なショッピングモールをゼロから作り上げ、経営していく一人称視点のシミュレーションゲームです。
プレイヤーはモールのオーナーとして、アパレルや家電、レストラン、映画館など、多種多様な店舗を運営します。主な業務は、店舗のレイアウト設計から商品の仕入れ、トレンドに合わせた在庫管理、さらには会計業務まで多岐にわたります。
ゲームの要となるのは「顧客満足度」です。お客様を待たせないためのスタッフ雇用や、効率的な店舗配置、適正な価格設定などを通じて収益を上げ、新たな区画を開放していくことでモールを拡張します。最初は小さなお店からスタートし、試行錯誤を繰り返しながら、自分だけの巨大なショッピングモール帝国を築き上げましょう。
リラックスした環境で店舗経営の醍醐味を味わえる本作は、戦略的なマネジメントとクリエイティブな店舗作りを同時に楽しめる内容となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | Mall Simulator |
| 発売日 | 2025年11月3日 |
| 開発元 | F13 Games |
| 総レビュー数 | 2,798件 |
| 評価内訳 | 高評価: 2,516 / 低評価: 282 |
| 好評率 | 90% |
| 平均スコア | ★★★★☆ (4.5) / 5.0 |
| 日本語対応 | ✅ 対応 |
| 概要 | 小さなショッピングセンターを巨大なシティモールに発展させよう! 破産を防ぐために、新しい店舗やレストランを建設し、賢く価格を設定し、トレンドを追い続けよう。 15以上の店舗、数十の機械とサービス、そして数百のブランドがあなたを待っています! |
| 対応機種 | PC (Steam) |
データが示す不満の傾向

本作の不満データを紐解くと、そこには驚くほど偏った、しかし納得せざるを得ない「不全感」が浮き彫りになります。不満カテゴリの内訳において、圧倒的なシェアを占めるのが「バグおよび最適化」に関する問題です。
廃墟化するシステムと放置されたバグ
データによれば、低評価の主因として「バグ/最適化」を挙げる声が全体の約7割に達しています。これは単に「ちょっとバグが多いね」というレベルの話ではありません。本作をプレイし続け、三度のご飯よりバーコードをスキャンすることに没頭した私から見れば、このゲームのシステムは、屋台骨が腐りかけたまま増築を繰り返した違法建築のような危うさを孕んでいます。
特に深刻なのは、ゲームが進行してモールが拡大するほどに動作が重くなるという「最適化の欠如」です。最初はサクサク動いていても、店舗数が全体の3分の2に達する頃には、日を跨ぐ処理だけで数十秒のフリーズが発生し、最終的には「応答なし」のダイアログと対面することになります。これは、やり込んだプレイヤーほど「物理的に遊べなくなる」という、シミュレーションゲームとしては致命的な欠陥なのです。
開発者の「失踪」という最大のバグ
さらに、ユーザーの怒りを買っているのはプログラムの不具合そのものではありません。その不具合に対して「何もしない」という開発側の姿勢です。多くのレビュアーが指摘している通り、本作は長期間にわたりアップデートが途絶えています。クリスマスイベントが春になっても終わらず、モールのBGMがジングルベルを奏で続ける様子は、もはやホラー映画のワンシーンのようです。
(プレイ時間: 52時間) Has potential. Or should I say “Had” potential. Dead game, no word from developer and to many unfixed bugs. Save your money and spend it on a different game.
(翻訳:ポテンシャルはあります。いえ、「あった」と言うべきでしょうか。死んだゲームです。開発者からの音沙汰はなく、修正されないバグが多すぎます。お金を節約して、他のゲームに使いましょう。)
このレビュアーの言葉には、期待を裏切られた者の深い悲しみが込められています。開発者はコミュニティの批判的な意見を削除しているという疑惑もあり、ユーザーとの信頼関係は完全に崩壊していると言わざるを得ません。
不満の元凶「Und」の分析

さて、非常に興味深いデータがあります。頻出単語TOP7を見ると、「Und」「Das」「Die」「Ist」といったドイツ語が並んでいます。中でも「Und(そして)」が41回とトップです。これは何を意味するのでしょうか。
ドイツ語圏の叫びと接続詞の呪い
ドイツはシミュレーター系ゲームの熱狂的なファンが多いことで知られていますが、彼らの生真面目な国民性が、本作のいい加減な運営に対して爆発しているのです。頻出語の「Und」は、不満が一つでは終わらないことを示唆しています。「バグがある、そしてアプデがない、さらに開発者が逃げた……」というように、不満の連鎖が「Und」によって繋がれているのです。
網膜にゲームのUIが焼き付くまでプレイしたまん花の分析では、この「Und」は単なる接続詞ではなく、プレイヤーの蓄積されたストレスの代名詞です。「Spiel(ゲーム)」や「Update(アップデート)」という単語がこれに続くことからも、彼らが何を望み、何に絶望しているかは明白です。
接続詞が紡ぐ、終わりのない不満
彼らのレビューを詳しく読むと、「楽しかった、しかし……」という構造ではなく、「ひどい、そしてさらにひどいことに……」という絶望の積み上げが目立ちます。ドイツ語圏のユーザーは、このゲームのポテンシャルを誰よりも理解していました。だからこそ、その放置っぷりが耐えがたいのです。
(プレイ時間: 266時間) Spiel ist nicht mehr gut. Anfangs ja, aber da seit Weihnachten keine Updates kommen und das Weihnachts Update bis heut noch da ist ist sehr traurig. Nicht zu empfehlen. Ein Spiel, wo du den Käufer für 24 Stunden abholst, aber dann merkt man es stockt… es geht nicht weiter… es wird langweilig….man hat alles erreicht, wenig individualität möglich.
(翻訳:このゲームはもう良くありません。最初は良かったですが、クリスマス以来アップデートがなく、クリスマスのアップデートがいまだに残っているのは非常に悲しいことです。おすすめしません。最初の24時間は楽しめますが、その後、停滞していることに気づきます。先がなく、退屈になります。すべてを達成してしまい、個性もほとんど出せません。)
266時間もプレイしたこのユーザーの言葉は重いですね。彼はこのゲームに「救い」がないことを悟ってしまったのです。「そして(Und)」の先にあったのは、進化ではなく停滞でした。
ユーザーが直面する現実

このゲームを、実家の間取りよりモールの配置に詳しくなるまでやり込むと、ある種の「虚無」に直面します。それは、煌びやかなショッピングモールの照明の下で、虚ろな目で棚に商品を詰め続ける店主の姿そのものです。
永遠に明けないクリスマスの恐怖
最も象徴的なのは、やはり「季節の停止」です。現実世界では桜が散り、初夏の風が吹いているというのに、ゲーム内のモールは依然として12月25日の装飾に彩られています。これは単なるグラフィックの問題ではありません。開発側が「この世界を維持するつもりがもうない」というメッセージを、無言で発信し続けていることに他ならないのです。
多くのプレイヤーが指摘するように、当初提示された「ロードマップ」は今や絵に描いた餅です。早期アクセス(EA)という言葉が、開発を途中で投げ出すための「免罪符」として機能してしまっている現状。これはシミュレーター界隈における「早期アクセスの罠」を煮詰めたような状況と言えます。
エスカレーター逆走とスタッフの反乱
技術的な問題も深刻です。例えば、エスカレーターを逆走し続ける客。彼らは永遠に目的地に辿り着けず、モールのエネルギーを無駄に消費し続けます。また、スタッフを雇えば自動化されるはずが、彼らはドアと格闘し、商品を置きたくない場所に詰め込みます。プレイヤーは結局、彼らの尻拭いのために走り回ることになるのです。
(プレイ時間: 103時間) seems like the developer has got their bag and dipped. the discord is just a bunch of people asking when the next update will be. its still christmas in the game, no practical stocking methods or accurate count, you cant throw anything away, profit margins are very low and licenses being 2 4 days worth of revenue is crazy…
(翻訳:開発者は金を持って逃げたようです。Discordは次のアプデを待つ人たちの声で溢れています。いまだにクリスマスだし、まともな補充方法も在庫カウントもない。ゴミを捨てることもできないし、利益率は低すぎ、ライセンス料は数日分の収益に相当するほど高い。このゲームは半分しか完成していません。)
このレビュアーが嘆くように、中盤以降のバランス調整は投げやりです。利益率は低く、新しいライセンスを取得しても、それが必ずしも利益に直結しない。自由度の高さを謳いながら、効率を求めると特定の安い店舗から順に開放するしかない「保守的なプレイ」を強要されるのです。経営のロマンは、雑な数値設定によって霧散しました。
それでも支持される理由

ここまで手厳しく語ってきましたが、実は本作、好評率は90%という驚異的な数字を維持しています。キーボードのWキーが摩耗して消えるほど歩き回った私には、その理由もよく分かります。このゲームには、毒があると分かっていても食べてしまう、河豚のような魅力があるのです。
「いいとこ取り」が生んだ奇跡の中毒性
本作の最大の功績は、これまでバラバラに発売されていた「〇〇シミュレーター」を一つの大きな器にまとめたことです。アパレル、スーパー、ゲーセン、宝石店……。本来なら別々のゲームとして500円〜1500円程度で売られている要素が、一つのモールの中に凝縮されています。この「マルチ店舗経営」というコンセプト自体が、ゲーマーの収集欲と管理欲を強烈に刺激するのです。
最初はアパレルショップのレジ打ちから始まり、少しずつ資金を貯めて自販機を置き、ついに念願のゲーセンをオープンさせる。この「拡大していく感覚」の演出は、確かに見事です。特にクレーンゲームが異常なほどの利益を叩き出すバランスは、経営ゲームとしては破綻していますが、「稼ぐ快感」としては最高レベルに調整(あるいは放置)されています。
自動化という甘い蜜
また、スタッフ雇用のハードルが低いことも高評価に繋がっています。序盤から安価でスタッフを雇えるため、「自分は経営判断と補充に専念し、面倒なレジ打ちは任せる」という役割分担がすぐに可能です。段ボールが空になった瞬間に消滅するなどのユーザーインターフェース(UI)の快適さもあり、プレイ初期の「手触りの良さ」は、他の競合作品を圧倒しています。
多くのプレイヤーは、この「最初の20時間」の極上の体験に対して高評価を付けています。その後の「最適化不足によるクラッシュ」や「アプデ停止」という地獄を見る前に、彼らは満足してレビューを投稿してしまったのかもしれません。ですが、その一瞬の輝きが本物であったこともまた、事実なのです。本作は、未完成という欠陥を抱えながらも、経営シミュレーターの「楽しさのコア」を見事に突いています。
最終評価と購入ガイド
さて、鏡を見ると自分の顔がポリゴンに見えるほど本作に浸かったどす恋まん花が、最後に結論を下しましょう。
『Mall Simulator』は、非常に惜しい、そして罪深いゲームです。
経営シミュレーターとしての「遊びやすさ」と「多店舗展開のロマン」をこれほど高い次元で融合させた作品は稀です。しかし、そのポテンシャルは開発者の沈黙と、放置されたバグの山によって、今まさに埋もれようとしています。
もしあなたが「終わりのない、完成された帝国」を求めているなら、今はまだ買うべきではありません。しかし、「ひと時の煌びやかな夢」を見たいのであれば、セール価格で手に入れる価値は十分にあります。
✅ 購入をお勧めする人
- 複数の店舗を同時に管理するという「欲張りな経営」を体験したい人
- 初期のサクサクとした拡大成長の快感を低価格で味わいたい人
- バグやエスカレーターの逆走を「シュールな笑い」として受け流せる広い心の持ち主
❎ 購入を避けるべき人
- 開発者との密なコミュニケーションや、定期的なアプデを重視する人
- 中盤以降の重い動作や、フリーズに耐えられない低スペックPCユーザー
- 「クリスマスイベントは、12月中に終わるべきだ」という常識を重んじる人
執筆:どす恋まん花
