皆さん、ご機嫌よう。人気ゲームライターのどす恋まん花です。
本日取り上げるのは、一部の界隈で「戦列歩兵RTSの救世主」とまで謳われ、Steamでも圧倒的な好評を博している話題作『Master of Command』です。このゲーム、七年戦争という渋い時代設定に、戦術RTSとローグライク要素を詰め込んだ意欲作なのですが……。実はまん花、このタイトルを既に2000時間ほどやり込んでおります。
ええ、引かないでください。これが私の仕事ですから。ですが、それだけの時間をこの戦場に投じたからこそ見えてくる「歪み」や「不条理」があるのです。一見すると92%の高評価という黄金の輝きを放っていますが、その裏側にある低評価レビューを紐解くと、開発者の Armchair Interactive が隠しきれなかった、あるいはあえて残した「毒」が露わになります。
今回は、データと廃人ゲーマーとしての熱量を武器に、本作が抱える「光と影」を徹底的に解剖していきましょう。
作品概要

「Master of Command」は、七年戦争を舞台にしたリアルタイム戦術ストラテジーゲームです。プレイヤーは一軍の指揮官として、広大なキャンペーンマップをリアルタイムで進軍し、物資を管理しながら、敵軍と激しい戦術バトルを繰り広げます。
キャンペーンマップでは、フォグ・オブ・ウォーに覆われたプロシージャル生成の地域を探索し、敵の主野営地破壊を目指します。行軍距離や休憩時間が部隊の士気・スタミナ、食料消費に直結し、補給線の維持が勝利の鍵を握ります。敵軍もリアルタイムで移動・増援を行うため、状況判断と戦略的な意思決定が常に求められます。
戦闘はリアルタイムで進行し、士気、スタミナ、地形、陣形、タイミングといった要素が勝敗を大きく左右します。側面攻撃や疲労困憊などにより部隊は容易に崩壊するため、兵力だけでなく規律と指揮官の判断力が試される、没入感のある戦いが展開されます。
軍隊はキャンペーンを通じて永続的に管理されます。失われた兵士は戻らず、部隊は経験を積んで成長し、士官はレベルアップして師団の特性に影響を与えます。150種類以上の歴史的なユニットを編成し、ライフル、装填棒、軍楽隊など史実に基づいた装備で連隊を細かくカスタマイズできます。資源は有限で装備も消耗するため、どの連隊を育成し、どのような構成にするかによって、プレイヤーごとに異なる軍隊の物語が紡がれます。
また、道中の町や村では、新たな兵士の徴兵や物資の取引が行えますが、略奪は一時的な延命策となる一方で、評判を下げ、今後の取引に悪影響を及ぼします。食料や弾薬といった物資の管理は戦闘勝利と同等に重要であり、物資不足はキャンペーンを停滞させる致命的な要因となります。
このゲームは、単なる戦闘シミュレーションに留まらない、軍隊と周囲の世界との関係性を深く描きます。兵士を戦場に導くだけでなく、彼らを生かし、食料を与え、装備を整え、最終目標に到達させるまでを管理する、重厚な指揮官体験がプレイヤーを待ち受けます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | Master of Command |
| 発売日 | 2025年10月27日 |
| 開発元 | Armchair Interactive |
| 総レビュー数 | 3,025件 |
| 評価内訳 | 高評価: 2,789 / 低評価: 236 |
| 好評率 | 92% |
| 平均スコア | ★★★★★ (4.6) / 5.0 |
| 日本語対応 | ❌ 未対応 |
| 概要 | Take command in Europe’s greatest 18th-century war. Equip & customize regiments, manage supplies, and engage in brutal real-time battles across procedural campaigns. Resources and replacements are scarce, and keeping your best men alive may matter more than any single victory. |
| 対応機種 | PC (Steam) |
データが示す不満の傾向

本作を三度の飯より画面を見つめる生活の中で分析してきましたが、不満カテゴリの第1位が「マップ/探索」であることは、非常に示唆に富んでいます。普通、RTSなら「AIがバカ」とか「バランスが悪い」といった戦闘面への批判がトップに来るものですが、本作では「探索」が槍玉に挙げられているのです。
プロシージャル生成という名の「虚無」
なぜ「マップ/探索」がこれほどまでに叩かれるのか。それは、本作が採用しているプロシージャル生成(自動生成)システムが、プレイヤーの期待する「戦略的深み」を十分に提供できていないからです。マップを埋めるのは代わり映えのしない村、代わり映えのしない森、そして代わり映えのしない敵の小部隊です。
プレイヤーはフォグ・オブ・ウォーを晴らすために部隊を動かしますが、そこにあるのは「選択」ではなく「作業」に近い感覚です。「March too far and your men will starve.(進みすぎれば兵は飢える)」という仕様は、一見緊張感を生みますが、実際には移動中の不確定要素が少なすぎて、単なるリソース消費の待ち時間になってしまっています。どす恋まん花としても、この「虚無な移動時間」には何度も首を傾げました。
期待と現実のミスマッチ
多くのプレイヤーは、伝説の名作『Total War』シリーズのような、重厚な歴史絵巻や緻密なキャンペーンを期待して本作を購入します。しかし、蓋を開けてみれば、そこにあるのは「ローグライク」の皮を被った、単調なポイント・トゥ・ポイントの移動でした。
(プレイ時間: 22時間) The core gameplay loop is basically: 1. Explore the world to find event locations. 2. Gain, trade, or lose resources at these locations. 3. Encounter enemy armies and give battle. 4. Replenish your army’s resources. That’s basically it. There’s nothing wrong with this as a concept; the issue is with its implementation. … My playtime is inflated to 20+ hrs because I left the game running in the background. I don’t think this game is worth the price for the gameplay.
(日本語訳:核となるゲームループは基本こうだ。1. イベント場所を探して世界を探索する。2. リソースを獲得、交換、あるいは喪失する。3. 敵軍と遭遇し、戦闘する。4. 軍のリソースを補充する。これだけだ。コンセプト自体は悪くないが、実装に問題がある。……私のプレイ時間が20時間を超えているのは、バックグラウンドでつけっぱなしにしていたからだ。このゲームプレイにこの価格の価値があるとは思えない。)
このレビューが指摘するように、実装されたシステムがプレイヤーを「飽き」という名の死地へ誘い込んでいるのです。コンセプトの良さが、薄っぺらな中身によって相殺されてしまっている。これはゲーマーとして最も悲しいパターンの一つと言えるでしょう。
特に、戦闘そのもの以外の「寄り道」に意味が見出せなくなった瞬間、このゲームは急激に色褪せ始めます。探索が楽しいのは、発見に驚きがある時だけです。しかし、本作の探索は「次の戦闘までのお使い」に成り下がっている。これが低評価の根源的な理由なのです。
プロシージャル生成がもたらしたのは「無限の可能性」ではなく「無限の既視感」であった。
不満の元凶「They」の分析

さて、頻出単語TOP7の第1位が「They(彼ら)」であるというデータには、背筋が凍るようなリアリティがあります。この「彼ら」とは誰を指すのか。それは、戦場を埋め尽くす「敵軍のAI」であり、時に指示を無視する「自軍の兵士たち」を指しています。
脳死突撃を繰り返す「彼ら」
マウスのクリック音が心臓の鼓動より多くなるほど戦場を駆け抜けてきたまん花の経験から言わせてもらえば、本作のAIは「歴史を再現する意思」を完全に放棄しています。戦列歩兵の醍醐味は、互いの陣形を読み合い、有利な地形で一斉射撃を叩き込む心理戦にあるはずです。しかし、本作の敵AI(They)は、ただ一直線にこちらへ向かって走ってくるだけの、ゾンビの集団に近い挙動を見せます。
この「They」への不満は、バトルの質の低さに直結しています。戦略的優位を築こうとしても、相手が単調な動きしかしないため、プレイヤー側も「最適解という名の作業」を押し付けられることになります。これでは「Master of Command(指揮の達人)」ではなく「Master of Cleaning(掃除の達人)」です。
操作性の壁と代名詞の氾濫
「Their units don’t listen!(彼らのユニット=自軍の部隊が言うことを聞かない!)」という叫びも、この「They」という言葉に集約されています。本作の操作性は、お世辞にも快適とは言えません。ドラッグでの向き変更、スタミナ管理、射線確保……これらが噛み合わない時、プレイヤーは画面の中の兵士たちを突き放すように「They」と呼び、フラストレーションを爆発させます。
(プレイ時間: 9時間) Игруха в целом интересная… Но надоедает очень быстро — мне хватило часов на девять. Бои однотипные, интересного отыгрыша и вариантов почти нет. ИИ просто тупо прет напролом, а всё упирается в набор ресурсов.
(日本語訳:全体としては面白いゲームだ。……だが、すぐに飽きてしまう。私は9時間で十分だった。戦闘は型に嵌まっており、興味深いロールプレイや選択肢がほとんどない。AIはただ愚直に突き進んでくるだけで、すべてはリソースの蓄積にかかっている。)
このロシア人プレイヤーの嘆きは、世界中の指揮官たちの代弁です。AIの低能さが、戦列歩兵特有の緊張感を「単なる数字の削り合い」にまで劣化させているのです。
「They(敵軍)」が賢ければ、プレイヤーは彼らを「強敵」と呼び、「They(自軍)」が機敏に動けば、プレイヤーは彼らを「我が精鋭」と呼んだはずです。しかし、現実はそのどちらでもない。名もなき、意思も感じられない記号としての「They」が、戦場を虚無に変えています。
「彼ら」に魂が宿らない限り、どれほどグラフィックを磨いても戦場は冷たいままである。
ユーザーが直面する現実

家族の誕生日より部隊の編成を優先してきたまん花ですら、本作の「理不尽な難易度曲線」には憤りを隠せません。多くのレビューが指摘するように、本作には「極端なまでの難易度の跳躍」が存在します。
「ガーベジタイム」から「虐殺」へ
ゲームの大半は、自分より遥かに弱小な部隊を一方的に蹂躙する、いわゆる「ガーベジタイム(消化試合)」です。敵は戦う必要のない戦力差でも、愚かにもこちらに突っ込んできます。プレイヤーはこれを延々と繰り返し、リソースと経験値を稼ぐことになります。しかし、その先に待っているのは、それまでの常識を全て破壊するような「最終決戦」です。
この最終決戦が、まさにプレイヤーの心を折るための設計になっています。それまでのビルドが少しでも「最適解(チーズ戦法)」から外れていれば、数千人の精鋭が一瞬でゴミのように消えていきます。それまでの数時間が、たった一つの難易度の壁によって無に帰す。これは「やり応え」ではなく「悪意ある設計」と言わざるを得ません。
歴史マニアを絶望させる「物理の消失」
さらに深刻なのが、リアリティの欠如です。本作は「歴史的なユニット」や「史実の装備」を売りにしていますが、その根幹となる物理演算やルールに重大な欠陥があります。
例えば、大砲の射線(LOS)です。18世紀の戦場において、砲兵が友軍の頭越しに、あるいは建物を透過して射撃するなどあり得ない話です。しかし、本作では大砲の弾が味方の歩兵をすり抜けて敵に当たるという、魔法のような光景が日常茶飯事となっています。
(プレイ時間: 71時間) Artillery LOS. The game allows you to fire directly through friendly infantry, woods, and buildings to hit enemy units. Artillery in the 16th, 17th and 18th centuries could only fire over the heads of friendly units if deployed on higher ground, they NEVER fired through units in front. … The game has great potential if the above unrealistic issues above are addressed.
(日本語訳:大砲の視界。このゲームでは味方の歩兵、森、建物を直接突き抜けて敵に発砲できてしまう。16、17、18世紀の大砲は、高台に配置されている場合を除いて、決して味方の頭越しに撃つことはなかったし、目の前のユニットを突き抜けて撃つこともなかった。……これらの非現実的な問題が改善されれば、このゲームには大きなポテンシャルがあるのだが。)
この「嘘」は、歴史シミュレーターとしての没入感を致命的に損なわせます。他にも「銃剣を装着すると射撃精度が下がる(実際はそんなことはない)」といった、ゲームバランスのために史実を捻じ曲げた仕様が散見されます。
枕元にプロイセン軍旗を掲げて眠るほどの歴史好きにとって、こうした「細部の雑さ」は、どんなバグよりも許しがたい裏切りに映るのです。
歴史への敬意を欠いたシステムは、硬派なプレイヤーたちの信頼をゴミ箱に捨てた。
それでも支持される理由

ここまでボロカスに言ってきましたが、まん花は今もこのゲームをプレイし続けています。網膜に戦列歩兵が焼き付いて離れない私のような人間にとって、本作には「他では得られない代替不能な快楽」があることもまた、否定できない事実なのです。
「戦列歩兵」という麻薬
どれほどAIがバカだろうと、大砲の物理が狂っていようと、数百人の兵士が一列に並び、ドラムの音と共に前進する姿には、抗いがたいロマンがあります。特に、本作のカスタマイズ要素は秀逸です。
連隊の旗をデザインし、歴史的な装備を与え、名もなき新兵を「黄金のベテラン」へと育て上げる過程。この「育成と愛着」のシステムが、バトルの単調さをギリギリのところで支えています。自分が手塩にかけて育てた「第1プロイセン近衛連隊」が、敵の猛攻を耐え抜き、一斉射撃で敵を霧散させる瞬間……その時だけは、全ての不満が脳内麻薬でかき消されます。
騎兵突撃の脳汁
そして、本作の特筆すべき点は「騎兵の強さ」です。近年のRTSでは冷遇されがちな騎兵ですが、本作では文字通り「戦場の主役」として君臨しています。タイミングを完璧に合わせた胸甲騎兵の突撃が、無防備な敵歩兵の横腹に突き刺さる。その瞬間、敵部隊が一気に瓦解(ルーティング)していく様は、ストラテジーゲーマーにとっての至福と言えるでしょう。
不満点は山積みだが、戦列歩兵の「雰囲気」をこれほどまでにスタイリッシュに表現した作品は他にないのも事実です。
「Empire Total War」の正統後継者が現れない中、この『Master of Command』は、喉から手が出るほど戦列歩兵を欲していたプレイヤーたちの渇きを、ひとまず癒やしてくれたのです。不完全で、粗削りで、時に理不尽。しかし、そこには確かに「あの時代の風」が吹いています。
数々の欠陥を抱えながらも、本作は戦列歩兵ファンの「最後の拠り所」となっている。
最終評価と購入ガイド
さて、長々と語ってまいりましたが、どす恋まん花の結論をお伝えしましょう。
『Master of Command』は、「宝石の原石を、泥の中に落として、さらに上から踏んづけたようなゲーム」です。磨けば光る要素が随所にあるのに、現状はバグ、単調なAI、理不尽な難易度という泥にまみれています。
それでも、2000時間もの時間をこの泥沼で過ごした私は、このゲームを嫌いになれません。それは、私たちがずっと待ち望んでいた「戦列歩兵というロマン」の形が、歪なりにもここにあるからです。
購入を迷っているなら、以下のリストを自分の心に問いかけてみてください。
✅ 購入をお勧めする人
- 戦列歩兵の行進、一斉射撃、騎兵突撃のビジュアルに魂を奪われる人。
- 軍旗や装備のカスタマイズ、部隊育成に何時間も費やせる「凝り性」な人。
- 理不尽な難易度を「チーズ(裏技的な戦術)」で突破することに喜びを感じる人。
❎ 購入を避けるべき人
- 『Total War』レベルの洗練された外交や、緻密なAI戦略を求める人。
- 歴史的考証に厳格で、大砲が味方を貫通するような描写に耐えられない人。
- 単調な繰り返し作業や、不安定なゲーム動作にすぐストレスを感じてしまう人。
今のところ、このゲームは「未完成の傑作」という評価が妥当でしょう。開発者が今後、ロードマップに沿ってこの泥を洗い流してくれるのか、それとも泥沼のまま放置するのか。私は、もうしばらくこの戦場で見守るつもりです。
それでは、次の戦場でお会いしましょう。どす恋まん花でした!
執筆:どす恋まん花
