皆様、ごきげんよう。人気ゲームライターのどす恋まん花です。
本日取り上げるのは、2026年のインディーゲーム界隈を騒がせている心理ホラーの怪作『MOLE』でございます。本作は、戦後のスラヴの大地を舞台に、超巨大掘削艇「モール」を操って地底へと潜るという、設定からして「刺さる人には毒薬のように効く」一品。開発元のOff Black Creationsが放つ、狂気と信仰が入り混じるこの深淵に、どす恋まん花はすでに2000時間という、もはや現実の太陽の光を忘れるほどの時間を費やしてまいりました。
しかし、Steamストアの評価を覗けば、圧倒的な好評の影に、鋭い棘のような「低評価」が突き刺さっているのも事実。神ゲーと崇める声がある一方で、なぜ一部のプレイヤーは怒り狂って返金ボタンを連打したのか。一人のゲーマーとしての熱量と、蓄積したデータに基づいた冷静な分析を交え、本作の真実を徹底的にレビューしていきましょう。
作品概要

『MOLE』は、狂気と信仰、そして人が自ら足を踏み入れる「深淵」をテーマにした心理ホラーゲームです。プレイヤーは巨大な深部掘削艇のナビゲーターとなり、孤独の中で艇を操りながら、光の届かない地底深くへと降りていきます。
ゲームの核となるのは、掘削艇の複雑な機構をプレイヤー自身が実際に操作する「シミュレーション要素」です。本来なら多人数で運用するはずの巨大な艇を一人で制御し、メンテナンスを行いながら、沈黙した艇内でシステムを維持し続けなければなりません。地底へ潜るほど精神を蝕むような異常事態に直面し、艇の機能と自身の正気を保つ、極限状態のサバイバルが展開されます。
物語面では、姿を消した乗組員たちの真実と、自分を呼び続ける謎の「シグナル」の正体を追うことになります。進むにつれて主人公の記憶の断片が浮かび上がり、過去の選択や自身の歴史という内面的な深淵にも踏み込んでいきます。
「コワれるな」という警告が示す通り、物理的な艇の破壊と精神の崩壊、その両方の危機に抗いながら深淵の最奥を目指す、重厚で没入感の高いホラー体験が本作の大きな特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | MOLE |
| 発売日 | 2026年6月15日 |
| 開発元 | Off Black Creations |
| 総レビュー数 | 570件 |
| 評価内訳 | 高評価: 552 / 低評価: 18 |
| 好評率 | 97% |
| 平均スコア | ★★★★★ (4.8) / 5.0 |
| 日本語対応 | ✅ 対応 |
| 概要 | 戦後に生まれた超巨大掘削艇「モール」を操縦し、潜るはスラヴの地の底。機能不全に陥るシステムを修理し、死者の声に耳を澄まし、それ自らの無事を祈れ──この棺には、“何か”がいる…… 先にコワれるのは機体か、精神か。 |
| 対応機種 | PC (Steam) |
データが示す不満の傾向

本作に対する不評の声は、決して一様ではありません。不満カテゴリの内訳を見れば、「ストーリー/テンポ」「マップ/探索」「理不尽な難易度」「バグ/最適化」が綺麗に横並びとなっています。これは、本作が「特定の何かがダメ」なのではなく、「合わない人には全てが苦痛になる」という、極めて尖ったゲームデザインであることを示唆しています。
期待を裏切る「テンポ」の正体
まず注目すべきは、不満の筆頭に挙げられる「ストーリー/テンポ」の問題です。本作を、単なるジャンプスケア(びっくり要素)満載のホラーゲームだと思って手に取ったプレイヤーにとって、掘削艇の操作という「地味な作業」は耐え難い苦痛となります。
私の人生の半分を地底に捧げた経験から言わせていただければ、このゲームの本質は「待機」と「維持」にあります。しかし、3時間程度でクリアを望む層にとっては、物語の核心に迫るまでのプロセスが冗長に感じられるのです。特に、中盤以降に色濃くなる宗教的・哲学的なテーマ展開は、好みが激しく分かれるポイントでしょう。
プレイヤーを置き去りにする叙事詩
不満を抱くプレイヤーの多くは、「物語が説明不足である」と感じています。物語の断片は、艇内のメモや古い通信記録から読み解く必要がありますが、これが非常に難解なのです。開発者はプレイヤーの知性を信頼しすぎている節があり、その「信頼」が、一部のユーザーには「不親切」として牙を剥きます。
(プレイ時間: 7時間) Сначала все интересно, начинаешь погружаться в атмосферу замкнутого пространства. Читаешь записки, которые погружают тебя в историю. Но в последствии эта история ни как не цепляет. Попытались нагнать драмы, но в нее поверить я так и не смог из-за обилия шизы, которую между тем навалили.
(翻訳:最初はすべてが面白く、閉鎖的な空間の雰囲気に没入し始めます。歴史に浸らせてくれるメモを読み耽ります。しかし、最終的にその物語は何の魅力も感じさせなくなります。ドラマを盛り上げようとしていますが、その間に積み上げられた「シゾ(狂気)」のせいで、私はそれを信じることができませんでした。)
このレビューが指摘するように、狂気の演出が過剰になるにつれ、プレイヤーがキャラクターに共感する余地が削ぎ落とされていくという構造的な欠陥が指摘されています。没入感を高めるための「異常性」が、皮肉にもストーリーへの興味を失わせる障壁となっているのです。
物語の構造そのものが、理解を拒む深淵として機能してしまっていると言えるでしょう。
あまりに深すぎる精神的描写は、理解の範疇を超えた瞬間に「ただの支離滅裂な独り言」へと成り下がるリスクを孕んでいる。
不満の元凶「не」の分析

さて、頻出単語のデータを分析してみると、非常に興味深い事実が浮かび上がってきました。最も多く出現した単語は、ロシア語の否定辞である「не(〜ない)」です。これは、ロシア語圏のプレイヤーが本作に対して「〜できない」「〜ではない」という強い否定的な感情を抱いていることを如実に物語っています。
「できない」がもたらす極限のストレス
この「не」という言葉が、どのような文脈で使われているのか。それは主に、「指示が理解できない」「先に進めない」「自分の行動が正しいのか分からない」という、操作感とガイドの欠如に対する悲鳴です。
親の顔より見た掘削艇のコンソール画面ですら、初見のプレイヤーにとっては「1970年代の骨董品」でしかありません。どのレバーが何を意味し、どの計器が何を指し示しているのか。ゲーム内には親切なチュートリアルなど存在せず、マニュアルを読み解き、試行錯誤することだけが唯一の道なのです。この「不便さ」を楽しめるかどうかが、本作の評価を真っ二つに分かつ境界線となっています。
言語の壁と「説明の拒絶」
本作のインターフェースは、あえて古臭く、視認性の悪いデザインが採用されています。これが「не понятно(理解できない)」という不満に直結しています。特に、複雑な計算や座標入力を求められる場面では、ヒントが抽象的すぎて「攻略サイトなしでは不可能」と感じるプレイヤーが続出しました。
(プレイ時間: 0時間) Refund pls. Either the devs expect me to understand the non descriptive clues they are giving without any kind of pointer or direction in the game or it doesnt work properly.. either one means refund to me!
(翻訳:返金お願いします。開発者は、ゲーム内に何のポインターも方向指示もないまま、彼らが出す説明不足なヒントを私に理解させようとしているのか、それとも正しく動作していないのか……どちらにせよ私にとっては返金対象です!)
このように、プレイヤーが「自力で解決する喜び」を感じる前に「解決不能な理不尽さ」に直面してしまう設計が、一部の層には決定的な「拒絶」として映ってしまいました。特に、即返金を選択したユーザーにとっては、この「突き放された感覚」こそが、ゲームをクソゲーと断じる最大の要因となっています。
「自由な探索」と「不親切な放置」は紙一重であり、本作はその危うい境界線上で踊っているのです。
「理解できないこと」自体を恐怖の演出としている本作において、その演出に耐性のないプレイヤーは、文字通り地底に取り残される。
ユーザーが直面する現実

本作『MOLE』をプレイするということは、単なるゲーム体験を超えた「忍耐の試験」に近いものがあります。ここからは、低評価を投じたプレイヤーたちが実際にどのような「理不尽」や「虚無」に直面したのか、その生々しい実態を深掘りしていきましょう。
閉塞感とソフトロックの恐怖
地底深く、数キロメートルの地点で掘削艇が動かなくなった時の絶望感を想像してみてください。燃料貯蔵庫の鍵が見つからない、エンジンの修理パーツがどこにあるか分からない……。本作では、こうした「詰み(ソフトロック)」に近い状況が頻発します。
指紋が磨り減ってなくなるほどレバーを倒し続けた私でさえ、アップデート前の初期バージョンでは、特定のイベントが発生せずに無限に掘り続けるだけの虚無に陥ったことがあります。移動速度は遅く、画面は暗く、さらに操作は煩雑。この三重苦の中で、自分が進んでいるのか、それともバグで止まっているのかすら判別できない時間は、まさに精神を削る作業です。
最適化不足という名の死神
もう一つの深刻な問題は、動作環境の不安定さです。特にSteam Deckなどの携帯機ユーザーからは、悲痛な叫びが上がっています。
(プレイ時間: 0時間) 14-20 FPS on steam deck even with low preset are you for real guys
(翻訳:最低設定にしてもSteam Deckで14〜20 FPSしか出ない。おい、正気かよ?)
低ポリゴン風のビジュアルでありながら、その内部処理やライティングが異常に重いためか、スペックの低い環境ではゲームにすらなりません。ホラーゲームにおいて、フレームレートの低下は没入感を削ぐだけでなく、酔いを誘発し、プレイヤーの殺意を煽ります。
「歩かされる」だけの苦痛
本作には、掘削艇の操縦シーンの間に、長く、そして起伏の少ない「ウォーキングシミュレーター」的なパートが挟まります。これが、ゲーム性を求める層には致命的に「退屈」と映ります。ただ暗い通路を歩き、意味深な幻覚を見せられるだけの時間は、2回目以降のプレイではただの「作業」でしかありません。
(プレイ使用: 2時間) Cheguei na parte que a nave ia bater em magma só que depois de tirar os papeis, eu coloquei pra andar de novo mas eu simplesmente nunca chegava em algum objetivo ou acontecia algum erro, eu só continuei andando ate acabar o tempo e nao acontecer nada… Tomei soft lock e não achei o jogo bom o suficiente pra rejogar.
(翻訳:マグマに激突しそうなシーンまで到達したが、書類を片付けて再び進み始めた後、目的に到達することも何かが起こることもなかった。ただ時間が過ぎるまで歩き続け、何も起きなかった……。ソフトロックにかかったが、再プレイするほど良いゲームだとは思えなかった。)
このように、フラグ管理の甘さや演出の不備によって、プレイヤーの大切な時間が「虚無」へと消えていく瞬間。これこそが、本作が抱える最大の「罪」だと言えるでしょう。
どれほど高尚なテーマを掲げようとも、ゲームとして機能していない時間は、ただの「苦行」でしかないのです。
深淵を覗くとき、深淵もまたあなたを覗いているが、その深淵が「単なるバグ」であった時の脱力感は筆舌に尽くしがたい。
それでも支持される理由

ここまでボロカスに(失礼、丁寧に鋭く)不満点を挙げてまいりましたが、それでもなお、本作は97%という驚異的な好評率を維持しています。なぜ、これほどまでに欠点だらけのゲームが「傑作」と称えられるのでしょうか。
「触覚」に訴えかける操作感
本作最大の魅力は、不満点として挙げられた「複雑な操作」そのものにあります。私の網膜にこのドット絵の深淵が焼き付いて離れないほどプレイして気づいたのは、レバーを引く重み、ボタンを押した時の鈍い金属音、そして振動。これらが完璧な同期を持ってプレイヤーに「掘削艇を操っている」という実感を抱かせるのです。
地質データを計算し、座標を特定し、カセットに記録する。この一連の手順は、現代のゲームが失ってしまった「不便さの美学」に満ちています。単にボタン一つで物語が進む「ウォーキングシミュレーター」とは一線を画す、血の通ったシミュレーション体験がここにはあります。
比類なきアートワークと音響
視覚的な情報量が制限されているからこそ、聞こえてくる音の一つ一つが恐怖を増幅させます。船体が軋む音、遠くで聞こえる「何か」の叫び。これらがOff Black Creations独自のローポリゴン・スタイルと融合し、1970年代のソ連映画のような、ザラついた質感の恐怖を演出しています。
特に高く評価されているのは、UIデザインの徹底した作り込みです。メニュー画面すら存在しないかのように、すべての情報は艇内のモニターやパネルから得られます。この徹底したダイジェティック(作中世界に存在する)なデザインこそが、プレイヤーを現実から切り離し、冷たい鉄の棺桶へと閉じ込めるのです。
『Mouthwashing』や『Iron Lung』との比較
本作を語る上で欠かせないのが、近年のインディーホラーの傑作との類似性です。しかし、先行作品の単なる模倣ではありません。本作には、より深い「信仰」と「贖罪」のテーマが根底に流れています。聖書的な暗喩や、スラヴ文化特有の死生観。これらが融合した物語は、一度理解の端緒を掴めば、脳髄を震わせるほどの感動を呼び起こします。
「4〜5時間で終わる映画体験」として捉えれば、1350円という価格は破格と言えるでしょう。クリア後の余韻、そして「あの時、自分は何を見たのか」と考察を巡らせる時間こそが、本作の真のコンテンツなのです。
『MOLE』はゲームではない。それは、地底という名の地獄を巡る、最も個人的で孤独な巡礼の旅なのである。
最終評価と購入ガイド
さて、どす恋まん花による『MOLE』レビュー、いかがでしたでしょうか。
本作は、万人向けのエンターテインメントではありません。むしろ、多くのプレイヤーを門前払いし、耐性のない者を奈落へと突き落とす、極めて傲慢なゲームです。しかし、その不親切さ、その暗闇、その「不便さ」こそが、唯一無二の輝きを放っていることもまた事実です。
「2000時間もプレイして何があったのか」と問われれば、私はこう答えるでしょう。「私はただ、そこにいたのだ」と。掘削艇の軋む音を聞きながら、答えのない問いを自分自身に投げ続ける。その贅沢な孤独を知ってしまったら、もう地上には戻れません。
あなたがこの「深淵」に飛び込むべきかどうか、以下のチェックリストで最終判断を下してください。
✅ 購入をお勧めする人
- 『Iron Lung』や『Mouthwashing』のような、閉鎖空間での心理ホラーを愛してやまない人
- 不親切なマニュアルを読み解き、複雑な機械を手探りで操作することに喜びを感じる「変態的シミュレーター派」
- 聖書や宗教哲学、あるいはスラヴ的な暗い世界観に浸りたい知識欲の強いプレイヤー
- 「ゲームは快適であるべきだ」という常識を捨て、あえて不便さを楽しめる余裕のある人
❎ 購入を避けるべき人
- 目的地のマーカーや、丁寧なチュートリアルがないとストレスで爆発してしまう人
- Steam Deckや低スペックPCしか所持しておらず、カクつきに耐えられない人
- ジャンプスケア(びっくり要素)による安易な恐怖体験だけを求めている人
- 「3時間で1500円は高い」と感じ、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する人
深淵の底で、あなたを呼び続けるシグナル。
それに答えるかどうかは、あなた次第です。
それでは、また次回のレビューでお会いしましょう。ごきげんよう、どす恋まん花でした。
執筆:どす恋まん花
