皆さん、こんにちは。丁寧な言葉の中に時折毒が混じる、お馴染みのゲームライターどす恋まん花です。
本日お届けするのは、現在世界中で(色んな意味で)注目を集めているベトナム発のホラーゲーム『霊の災The Scourge』。まん花はこの作品の瘴気に当てられ、気づけば2000時間という、もはや現世に戻れるか怪しいレベルの時間をこの悪夢の中で過ごしてしまいました。
本作は、90年代のサイゴンを舞台にした非常に濃密なエキゾチシズムを感じさせる一作です。しかし、Steamの評価欄を覗けば「圧倒的好評」という数字の裏側に、悲鳴にも似た「低評価」の山が築かれているのも事実。今回は、廃人ゲーマーとしての視点と、蓄積されたデータをもとに、このゲームの真の姿を解剖していきたいと思います。
作品概要

『霊の災The Scourge』は、1990年代のベトナム・サイゴンを舞台にした一人称視点のホラーアドベンチャーです。プレイヤーは、過去に罪を犯し、今や超常的な力に呪われている主人公ニャット・フイとなり、彼とその家族を襲った悲劇の真相を探ります。
物語は、パンデミックの最中、朽ち果てたアパートから始まります。過去の悲劇に絶望し、幻覚に襲われるニャット・フイは、現実と幻覚の境界が曖昧な悪夢の中を彷徨うことになります。プレイヤーの目的は、自身の悲しみに向き合い、過ちを正し、精神と現実の両方で暴れ回る強大な敵を倒すことで、心の光を取り戻し、影に覆われた過去から抜け出すことです。
ゲームプレイでは、超常現象や謎が絶え間なく発生する中で、知恵を絞ってパズルを解き、未知のエリアを探索していきます。プレイヤーの一つの選択や行動が、主人公の運命と未来を決定づけるため、あらゆる試練に慎重に臨む必要があります。物語の進行と共に最後の決戦に備え、強大な敵との対峙を目指します。
本作の大きな特徴は、ベトナムの都市伝説や伝統を背景にした独自の世界観です。独特なカラーパレットと完全にベトナムを舞台にした設定により、プレイヤーはベトナム都市におけるホラーストーリーを深く掘り下げ、臨場感あふれる体験を味わえます。単なるホラーゲームに留まらず、入念に練り上げられたストーリーと鮮明なシーンが織りなす、感情豊かなアート作品としても評価されています。予告編でも示唆された黒影や訃報、ミステリアスなBGMが、ドラマチックな発見と幾重にも重なる恐怖に満ちた旅へと誘います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | 霊の災The Scourge |
| 発売日 | 2026年3月28日 |
| 開発元 | Rare Reversee, Beaztek |
| 総レビュー数 | 905件 |
| 評価内訳 | 高評価: 853 / 低評価: 52 |
| 好評率 | 94% |
| 平均スコア | ★★★★★ (4.7) / 5.0 |
| 日本語対応 | ✅ 対応 |
| 概要 | 身の毛のよだつ明晰夢の中を探索し、ニャット・フイとその家族が抱える謎を解き明かせ。舞台は90年代のサイゴン。荒廃した廊下に、幻覚的なパズル、隠ぺいされた大罪が待ち受ける。君は迷宮を抜け出し「霊災」から生き延びられるか? |
| 対応機種 | PC (Steam) |
データが示す不満の傾向

バグと最適化の泥沼
さて、まずは提供された「不満カテゴリの内訳」を見てみましょう。一目瞭然なのが、「バグ/最適化」が全不満の半数以上(8件)を占めているという点です。これは、美麗なグラフィックを誇る本作が抱える、最大の泣き所と言えるでしょう。
親の顔より見た画面……といっても、それは愛着のあるメニュー画面ではなく、クラッシュした際に出る無慈悲なデスクトップ画面のことかもしれません。特にPC環境における最適化不足は深刻で、最新鋭のグラフィックボードを積んでいても、特定のシーン(水上人形劇の部屋など)に入った瞬間にFPSが15程度まで垂直落下するという報告が相次いでいます。
Unityエンジンを使用している本作ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出そうとするあまり、ハードウェアへの負荷がコントロールしきれていない印象を受けます。低評価レビューの多くは、「ゲームが始まらない」「設定画面がズームされすぎて操作不能」といった、ゲーム内容以前の技術的なハードルに起因しています。これは「一人のゲーマー」として、非常に勿体ないと感じる部分ですね。
ストーリーの「薄さ」への失望
次に多いのが「ストーリー/テンポ」に関する不満(3件)です。本作は雰囲気を重視するあまり、物語の核心に触れる描写が断片的すぎて、プレイヤーが置いてけぼりになる場面が散見されます。
ホラーゲームにおいて、謎が謎を呼ぶ展開はスパイスになりますが、それが「説明不足」にまで至ってしまうと、プレイヤーのモチベーションは急降下します。特に後半の展開については、それまでの丁寧なビルドアップに対して「3分で要約できるほど内容が薄い」という手厳しい意見も見られます。雰囲気が最高なだけに、その中身が伴っていないと感じた時の落差が、低評価の引き金となっているようです。
(プレイ時間: 3時間) The graphics are photo-realistic, so no complaints there. But the plot is predictable, and some dialogues are painfully bad, even in Vietnamese.
(グラフィックはフォトリアルで文句の付けようがない。しかし、プロットは先が読めるし、いくつかの台詞はベトナム語で聞いていても痛々しいほどひどい。)
このように、ビジュアル面での期待値が高すぎたために、物語の稚拙さが際立ってしまうという構造的な問題が見て取れます。
美しすぎる外見が、かえって中身の空虚さを強調してしまうという皮肉な結果を招いている。
不満の元凶「không」の分析

「できない」という絶望の連鎖
続いて、頻出単語データに注目してみましょう。ランキングの堂々1位に君臨するのは「không」というベトナム語。回数はなんと16回です。これ、ベトナム語を知らない方のために説明しますと、英語で言うところの「No」や「Not」、つまり否定を意味する言葉なんです。
なぜレビューに「否定」がこれほど溢れるのか? それは、このゲームがプレイヤーに対して「〜できない」というストレスを強いる場面が多すぎるからです。
「FPSが安定しない(không ổn định)」
「バグのせいで進めない(không thể tiến triển)」
「ストーリーに深みがない(không có chiều sâu)」
といった具合に、プレイヤーの熱量を削ぐ要素が、この一単語に凝縮されていると言っても過言ではありません。
魂をハードディスクに刻み込んだ私から言わせれば、この「không」の多さは、開発陣の「プレイヤーへの配慮不足」が数値化したものだと感じます。特に、操作性の悪さに対する「không」は致命的です。主人公の移動速度が異様に遅く、まるで「慢性的な座骨神経痛を抱えているようだ」と揶揄されるほど。逃げなければならないシーンで思い通りに動けないストレスは、恐怖を通り越して怒りに変わります。
言語の壁と最適化の不在
また、この「không」は、特定のハードウェア環境における「非対応」を指す際にも多用されています。例えば、ウルトラワイドモニター(21:9)での表示不具合。メニュー画面が拡大されすぎて設定変更ができないという問題は、多くの海外プレイヤーにとって「遊ぶことすらできない」という絶望的な状況を作り出しました。
(プレイ時間: 3時間) 毫无优化的游戏, 帧数上下蹦迪。鼠标疯狂重置位置,能玩到脑溢血。不会做游戏建议不要做了
(全く最適化されていないゲームだ。フレームレートは乱高下し、マウス位置は勝手にリセットされる。脳溢血になるレベルの不快感。ゲームの作り方を知らないなら作らないほうがいい。)
このレビューからも分かる通り、技術的な未熟さがプレイヤーの身体的・精神的な苦痛に直結しているのが現状です。マウスの感度調整がリセットされる不具合など、細かな点での「できない」の積み重ねが、大きな不満の塊(Scourge)となっているのです。
頻出語「không」は、プレイヤーがこのゲームに対して突きつけた「NO」の総数である。
ユーザーが直面する現実

理不尽な難易度と死のループ
本作を語る上で避けて通れないのが、後半に待ち受ける「ボス戦(父親)」や「追跡劇(チェイス)」の理不尽さです。指紋がなくなるほどコントローラーを握りしめて挑戦し続けたプレイヤーたちを待っていたのは、達成感ではなく「虚無」でした。
ステルス要素が導入されるのですが、そのメカニズムが不透明で、どこまでがセーフでどこからがアウトなのかの基準が曖昧です。その結果、チェックポイントからのリスタートを繰り返す「デッドループ(死のループ)」に陥るプレイヤーが続出。ホラーにおいて「死」は恐怖の対象であるべきですが、本作では単なる「面倒な作業」へと成り下がってしまっています。
特に後半のチェイスシーンでは、説明不足なギミックとカクつく挙動が合わさり、攻略法を見つけるまで数十回、数百回とリトライを強いられることも珍しくありません。この「理不尽な難易度」が、ゲーム全体のテンポを著しく損なっています。
「未完成」という名の恐怖
さらに、多くのユーザーが指摘しているのが「早期アクセス(Early Access)としての不完全さ」です。現在、ゲーム全体の約60%程度しか実装されておらず、物語は途中で唐突に終わります。「続きは後日」という形式は、フルプライスに近い金額を支払ったプレイヤーからすれば、「騙された」という感覚に近い不満を生んでいます。
特に、2024年8月を最後にアップデートが止まっている(という指摘がある)点は、開発放棄の懸念を抱かせ、コミュニティに暗い影を落としています。人生の半分を捧げた(ような錯覚を覚えるほどの)熱心なファンでさえ、「今は買うな、完成を待て」と警鐘を鳴らさざるを得ない状況なのです。
(プレイ時間: 4時間) At the time of writing this you are spending $9.99 USD for a not complete game at all. For that, I cannot recommend this game until it is fully complete.
(これを書いている時点で、君は全く未完成のゲームに9.99ドルを支払うことになる。そのため、完全に完成するまでこのゲームはお勧めできない。)
このように、「体験の欠如」そのものが最大のホラー要素になっているという笑えない状況が、ユーザーレビューから浮き彫りになっています。物語のピークで「つづく」と表示され、バイクで走り去る主人公を見送るプレイヤーの心境は、察するに余りあります。
本当の「霊の災」とは、物語の結末を見ることができないプレイヤーの未練なのかもしれない。
それでも支持される理由

圧倒的なベトナム的「美」
ここまで不満点を中心に述べてきましたが、それでも本作の好評率が94%という驚異的な数字を維持している理由についても触れなければなりません。それは、他に類を見ない「圧倒的な美術センス」と「ベトナム文化への没入感」にあります。
90年代サイゴンの、あの湿り気を帯びた空気、ひしめき合う朽ち果てたアパート、極彩色の仏壇や祭壇の不気味な輝き。これらはUnityの性能を限界まで引き出したグラフィックによって、息を呑むような美しさで描き出されています。ベトナム独自の文化背景をホラーに昇華させた手腕は実に見事で、単なるジャンプスケア(びっくり要素)に頼らない、精神的な不安を煽る演出は一級品です。
網膜に焼き付いて離れない光景……。特に光と影の使い分けが絶妙で、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がる赤い提灯や、壁に刻まれた謎の文字が、プレイヤーの知的好奇心を刺激し続けます。不具合が多いと分かっていても、「この世界をもっと見ていたい」と思わせる魔力が、本作には備わっています。
翻訳のクオリティと「声」の力
また、意外な伏兵と言えるのが、日本語翻訳の質の高さです。インディーゲーム、それも東南アジア発の作品では機械翻訳が一般的ですが、本作は日本人プレイヤーが違和感なく没入できるレベルの自然な日本語が提供されています。
さらに、ベトナム語によるフルボイスが、異国情緒をさらに引き立てます。何を言っているか完全には分からなくても、その語気や震える声から伝わる恐怖は、言語の壁を越えて心に響きます。BGMについても、タイトル画面の楽曲が「最後まで聴くべき名曲」と評されるほど評価が高く、音響面でのこだわりが作品の格を一段上げているのは間違いありません。
こうした「アートとしての質の高さ」が、システム面の不備を補って余りある魅力となっているのです。不平不満を言いながらも、最後までプレイ(実装分まで)してしまうのは、この独特な世界観の虜になってしまった証拠でしょう。
不具合というノイズを突き抜けてくる、圧倒的な「文化の熱量」こそが本作の本質である。
最終評価と購入ガイド
さて、どす恋まん花としての最終的な結論をお伝えします。
『霊の災The Scourge』は、「最高級の食材を、未整備のキッチンで無理やり調理したフルコース」のような作品です。素材(美術・文化・設定)は間違いなく世界レベルですが、それを支えるインフラ(最適化・デバッグ・ゲームデザインの洗練度)が追いついていません。
あなたが「ベトナムの湿った恐怖に、バグを蹴散らしてでも飛び込みたい」という猛者なら、今すぐ購入ボタンを押すべきです。しかし、「安定したゲーム体験と、完結した物語」を求めるなら、今はまだその時ではありません。ウィッシュリストに入れて、開発者の「Hotfix」という名の供養が完了するのを待つのが賢明でしょう。
ベトナムホラーという新ジャンルの先駆者として、本作が抱える「痛み」も含めて愛せるかどうか。それが、あなたにニャット・フイの呪いを受け継ぐ資格があるかどうかの分かれ道です。
✅ 購入をお勧めする人
- 東南アジア特有の湿り気のある、濃厚なホラー演出を求めている人
- バグやFPS低下を「インディーの醍醐味」として笑い飛ばせる強靭な精神の持ち主
- 緻密に描き込まれた90年代ベトナムの風俗・文化に興味がある人
❎ 購入を避けるべき人
- 未完成(早期アクセス)のまま物語が中断されることに強いストレスを感じる人
- 快適な操作性と、理不尽さのない洗練されたゲームバランスを重視する人
- 3D酔いしやすく、不安定なフレームレートに敏感な人
執筆:どす恋まん花
